2008年10月08日

旅人の木 [タビビトノキ]

昨年の3月頃だったでしょうか。新聞の片隅に、安曇野の有明にカレー屋さんをオープンさせたご夫婦のことが記事になっていました。古民家を数年かけてコツコツと改装して、やっと念願かなってお店をオープンさせたという記事でした。当店もログハウスの組み立てこそ業者にお願いしましたが、内装はすべて私たち夫婦が手がけましたので、このようにご夫婦の力だけで仕上げたお店というのにとても共感して、記憶の片隅にいつまでも残っていたのでした。

それからほどなくして、あるお客様が当店にいらっしゃいました。話しを伺っていると、その方が安曇野の有明でカレー屋さんを始めた・・・ということになって、「もしかして新聞に出ていたお店ですか?」と聞いてみたところ、まさにその通りとのご返事。とてもびっくりしたのは言うまでもありません。さらにびっくりしたのは、カレーとチャイのお店なのに、喫茶目的で来店される方もいるからコーヒーも提供したいということ。そしてなんと当店のコーヒー豆を気にいってくれて、ウチの豆をぜひとも使いたいとおっしゃってくださったのです!

しばらくして、妻と一緒にそのお店を訪ねました。お店の名前は「タビビトノキ」。マダガスカル原産の木の名前からとった店名なのだとか。タビビトノキの葉は、東西に向かって広がるのだそうです。それで旅人が道に迷わずに旅することができるという、なんとも素敵な名前の由来を持つ木です。お店の店内も想像していた通り、手作りならではの素朴さと心地よさが溢れていました。店内には背丈ほどに育ったタビビトノキがあって、私たちを迎えてくれました。そして何よりTさんご夫妻が作られるカレーの美味しいこと!カレー店といえば「ナン」が定番ですが、タビビトノキでは「チャパティ」が出てきます。これが本当に美味しいのです。深い緑に囲まれた優しい空間の中で、時が経つのも忘れてしまいました。そしてそれから、当店のコーヒー豆を、宅急便でタビビトノキまで配送するという日々が続きました。当店のお客様にも紹介して、「行ってきたよ!あのカレーは本当に美味しいね!」なんていう話題で盛り上がったのです。

昨年の冬が近づいてきた頃だったでしょうか。Tさんからご連絡がありました。それは「少し早いですが冬ごもりしますので、しばらくお店を休みます」という内容でした。そして冬がすぎ春になったのですが、タビビトノキは再開されることはありませんでした。現在は別のオーナーが、別のお店をやっています。Tさんご家族に何かあったのかな・・・と心配していたのですが、先日、Tさんから手紙が届きました。手紙の消印から察するに、なんと現住所は県外。しかも温暖な海の近く。びっくりしたのと、久しぶりの便りが嬉しくて、急いで手紙を拝読させていただきました。

Tさんご夫妻、理由あって安曇野を離れ、暖かな町へ引っ越されたとのこと。引っ越された先でもお店を始めたいとのことで、着々と準備をされている様子。Tさんご夫妻の暖かみのある雰囲気が、手紙の行間からあふれてきて、読んでいてとても穏やかな気持ちになってきました。早ければ来春にもお店を再開されたいとのこと。その時はぜひとも十色珈琲のコーヒー豆をまた使いたい、という嬉しいお言葉まで添えられておりました。例えそれが実現しなかったとしても、私は全く構いません。Tさんご夫妻が、またあの素晴らしいカレーの味を作り出してくれる!それがたとえ信州から遠く離れた海の近くの町であったとしても、簡単にお店を訪ねることはできないとしても、夢をあきらめずに追いかけ続けているTさんご夫妻を、これからも応援することができるのですから・・・。

いつまでも旅人であるTさんのご家族。ご夫妻が育てているタビビトノキは、まだ見たこともない憧れの街を、今日も指し示しているに違いありません。


posted by jiro at 22:34| 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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